はじめに

かつての日本には、アジアの拠点空港として機能していた空港があった。それは、成田国際空港で、東アジアでは最も多くの航空会社が乗り入れ、周辺国に比べて就航都市も多かったからである。しかし、現在は毎年乗り入れている航空会社や就航都市が増えるアジアの空港が増加している。現在、成田空港からは74社、海外101都市と結ばれているが、韓国・ソウルの仁川空港からは86社、海外173都市、シンガポールのチャンギ空港からは101社、海外207都市と結ばれている。

また、日本の国際空港には多くの課題を抱えている。成田空港は夜間に全く発着できず、国内線も少なく、都心からも遠いうえに、発着枠が満杯で、新たな乗り入れ、増便ができない。一方で、発着枠に余裕がある関西国際空港や中部国際空港は、海上空港ゆえに維持費がかさむので、航空会社が乗り入れに際して生じる着陸料に転嫁されている。このため、関空は62社、海外66都市、中部は25社、海外27都市しか結ばれておらず、立派な施設を持て余している状態である。
アジア各国の空港が需要を伸ばしている中、かつての日本の空港の勢いを取り戻すために、2020年の東京五輪開催に向けて、世界中の人々を日本の空の玄関で歓迎する態勢を整えるために、日本の国際空港がアジアの拠点空港として機能する必要性が求められている。

そもそも空港では、航空機の離着陸、旅客や貨物の積み下ろしだけでなく、航空機の整備・補給能力、旅客や貨物の集配拠点といった役割が求められる。空港には、旅客や貨物の積み下ろしの設備であるターミナルビルや、航空機が離着陸するために必要な滑走路、ターミナルビルと滑走路の間に駐機場が並ぶエプロン、航空機がターミナルを離れて滑走路に向かうための道である誘導路、霧などの視界不良で航空機が着陸できないことを防ぐために、地上側から航空機を誘導するILS(計器着陸装置)、航空機を安全に離着陸できるように導く管制官が配置された管制塔がある。