月別: 2017年6月

日本の拠点空港は羽田?

日本の拠点空港候補4空港は、いずれも国際線と国内線が共に運航されている。

しかし、拠点空港になるためには、その空港に国際線と国内線の多くの路線が集まることが必要とされている。まずは、国内線について分析する。4空港のうち国内線の路線数が豊富なのは、羽田空港である。2011年度の国内航空旅客数合計7905万人のうち、羽田便利用者は5258万人で、国内旅客の約7割を羽田利用者で占めている。また、2012年度路線別輸送実績の上位20路線のうち、15の路線が羽田を結ぶ路線であった。路線数においても、羽田は国内45の空港と結ばれていて、成田は国内16、関空は国内12、中部は国内18の空港と結ばれていることを比べると、羽田の国内線の路線数は圧倒的に多いといえる。

しかし、成田、関空ではLCCの就航が増加し、LCC専用ターミナルが関空には2012年秋に完成し、成田にも2014年度に完成される予定で、LCCの国内線の需要の増加が期待される。一方、国際線に限っていえば、成田空港の輸送実績が他の3空港と比べて高い。しかし、成田は1本しかない4000m級の滑走路、24時間運用ができないといった問題から、発着枠に余裕がない。その弱点を補う形で開港された関空や中部も高い着陸料により、便数の減少が続いている。ところが、羽田は2010年のD滑走路と新国際線ターミナル完成以降、国際線の便数は増加傾向にあり、2014年3月末から国際線ターミナルが拡張されると同時に、日系航空会社の羽田発着の国際線は1日当たり26路線から42路線に拡大する予定である。また、羽田の国際線旅客数も順調に増加し、2014年3月期には802万人と成田の4分の1の水準に達する見込みである。

日本の拠点空港候補4空港の中で、アジアの拠点空港として機能できる日本の国際空港は羽田空港だ、というのが個人的な見解である。しかし、羽田空港が日本の拠点空港として機能するための課題がある。発着枠の拡大に向けた設備面の拡充や飛行ルートの見直しだ。国土交通省は発着枠の拡大に向けて、需要の減った国内線の発着枠の一部を国際線用に振り替えたり、5本目の滑走路や新たなターミナルビルをつくったりする案が出ているが、設備面での拡充では財源の工面が課題である。投資額が膨らむと、着陸料に跳ね返り、空港の競争力を逆に損なうことに留意する必要があるからだ。飛行ルートの見直しについては、東京上空の飛行を解禁する案も議論する可能性があるが、新たな騒音問題の浮上も考えられ、近隣自治体などとの合意形成が不可欠になる。設備面や財源面などの課題の克服によって、羽田の発着枠が拡大され、乗客が利用しやすい設備が整い、都心とのアクセスも整備されれば、羽田空港がアジアの拠点空港として機能し、日本の空の玄関口としても機能できると考えられる。

日本の拠点空港候補

日本の空港は空港法により、大きく分けて、拠点空港、地方管理空港、その他の空港、共用空港の4つに分類できる。

拠点空港は、①会社が設置及び管理する会社管理空港(成田・中部・関空・大阪(伊丹))、②国が設置及び管理する国管理空港(東京(羽田)、新千歳(札幌)、福岡、那覇など)、③国が設置し、地方公共団体が管理する特定地方管理空港(旭川、帯広、秋田、山形、山口宇部)、の3つを掲げる空港である。地方管理空港は地方公共団体が設置及び管理する空港である。その他の空港は拠点空港、地方管理空港及び公共用ヘリポートを除く空港である。共用空港は自衛隊が設置及び管理する飛行場である。日本の国際空港がアジアの拠点空港として機能するには、空港法第4条第1項に掲げる成田・東京(羽田)・中部・関空・大阪(伊丹)の5空港が候補に挙げられる。これらの空港は年間の利用客数が1,000万人以上で、拠点空港として十分な数である。

しかし、国内線しか運航されていない大阪(伊丹)は拠点空港候補から除外されると考えられる。理由としては、世界の空港には国際線と国内線で棲み分けされた空港がほとんどないからである。それは国際線が主流の関空と国内線運航のみの大阪(伊丹)との間は離れていて、その2空港を結ぶアクセスも悪く(バスで75分)、関空と大阪(伊丹)で国際線と国内線の乗り継ぎにはとても不便であり、1つの空港で国際線と国内線の乗り継ぎが便利であることが必要なためである。

上記4空港のうち、国が管理しているのは東京国際空港(羽田)のみである。2000年9月から航空局において開催された「首都圏第3空港調査検討会」で検討された結果、既存ストックの有効活用、旅客の利便性等の観点から、首都圏第3の空港を新設するより大きな優位性があるため、羽田空港の再拡張案を優先して推進することとされた。一方、都心からのアクセスで不便が生じる成田空港では、2010年に京成電鉄の成田空港新線が開業し、新線経由となる「スカイライナー」が新幹線以外で最速となる時速160kmで走行、都心~空港間を30分台で運転できるようになった。しかし、香港のエアポート・エクスプレスは香港島の中心と空港の間を12分間隔、所要23分で結ぶことなどを考えると、成田空港が現在でもアジアでは最も時間的に市内から遠い空港となっている。日本で完全24時間空港の条件を満たしているのは、関西国際空港のみである。完全24時間空港は、4000m級の滑走路を複数所有する空港のことで、一方の滑走路を深夜のメンテナンス等で閉鎖されても、他方の滑走路を運用できることから、24時間完全に運用できる空港を意味する。しかし、関西国際空港はその設備に見合った需要を得ていないのが現状である。

空港の概要

日本で定期旅客便が就航する空港で最も短い滑走路は800mで、主に離島の空港で小型プロペラ機の運航のみである。B737などの小型ジェット機が飛ぶには最低でも1500m、B767などワイドボディジェット機には2000m、B747ジャンボ機による国内線の離陸には2500m、B747やB777による欧米便の離陸などには3000mがそれぞれ必要である。成田や関空など国の玄関になるような国際空港では、あらゆる機種の貨物便の離陸や悪天候時でも着陸できる長さが求められるため、3500mや4000mの滑走路を持つ。4000m滑走路は必要に越したことはないが、3500mでも現在の運用には差し支えないというのが現状である。

関西空港B滑走路に関しては、海上なので用地確保は容易であるが、高額な着陸料の影響で便数は増えず、費用対効果の点では微妙なところである。滑走路の長さに関しては発着する機体に注目されがちだが、同じ機体でも国内線の旅客便と国際線の貨物便でかなり異なる。重さと同時に長距離必要なのが、離陸中にエンジントラブル等で離陸中止が必要な場合で、それを想定して長さが決まる。離陸時、離陸決定速度に達する直前でトラブルがあったとして、離陸中止に必要な長さが求められるためである。滑走路の長さが足りないと思われるのは、成田空港のB滑走路(2500m)である。当初、A滑走路側のターミナル1が長距離便、B滑走路側のターミナル2がアジア便とする計画があったが、これは約40年前の計画で、実際そのような運用はされておらず、滑走路延伸が望まれる。

また、滑走路の数は多ければ良いというわけでもなく、滑走路の数が多いと発着便が多いとも限らない。例えば、2本の滑走路が平行に並んでいれば、片方を離陸専用、もう片方は着陸専用での使用が可能だが、十字に配置されば同時使用ができない。しかし、2本の滑走路が交差している空港は、アメリカのシカゴ・オヘア空港やオランダのアムステルダム・スキポール空港など世界にはある。理由は気象条件が関わってくるからである。航空機は向かい風で離着陸を行うことで、翼に発生する揚力が大きくなり、機体を安定させることができるが、滑走路を1本配置しても、強い横風が頻繁に吹くなら、横風用滑走路が必要になる。このため、横風用滑走路が標準の滑走路と十字で交差する形で配置される。