空港の現状

航空需要の完全回復、アジアの伸び著しく

2024年度の航空業界の回復と変革はめざましいものがあった。
航空需要は2019年の水準を5.7%上回り、ついにコロナ禍から完全回復を果たした。
ヨーロッパ圏に比べて回復がやや遅れたアジア圏であったが、今年度の国際線の発着は欧州米国に大きく水あける伸びを見せた。
また国内線において中国の航空需要の伸びはめざましく前年同月比で35%増となり、これは中国市場において過去20年間において最高の値となっている。

そんな折オーストラリアの航空会社情報サイトが世界最高の航空会社のランキングを発表した。
このランキングは、安全性と政府監査、機体年齢や乗客の評価、収益性、安全性評価、サービス評価、などの12の主な要素を総合して世界の航空会社の格付けをしているものだ。2024年度の1位はカタール航空(カタール)、2位大韓航空(韓国)、3位キャセイパシフィック航空(中国、香港)となっている。カタール航空はビジネスクラスとエコノミークラスの乗客から非常に高い評価があったようだ。一方で米国の大手航空会社は軒並み順位を振るわず20位圏内となり、その理由について格付けサイトでは、機材の老朽化を上げている、そのため乗客の評判が良くなかったためだと述べている。
ちなみ日本の全日空は7位にあがっている。

サスティナビリティにおいての課題にも取り組みが進んでいる。電動航空機の開発を手掛けるスタートアップ企業も出てきており、電動航空機が完成すれば化石燃料を用いる従来の航空機と比較すると約90%もの燃料コストを削減できる見通しだという。
日本国内でもSAF燃料(廃食油や植物由来で作られる燃料)の導入促進へ向けた官民協議会が開かれるなど積極的な取り組みが進んでいる。

コロナ以前2019年度のを超える需要の伸びを受け、持続可能な航空業界の躍進に期待がかかる。

復調の航空業界、人手不足解消が課題

2023年度の航空業界はコロナ禍を乗り越えた。と言って良いだろう。
年間の業績は3年ぶりに黒字となりコロナ以前の活気を取り戻した。
消費者の旅行意欲が着実に数字となって現れている。

それに伴い旅行需要に応えるには人手不足が懸念されている。
コロナ禍で一度離れた人材が全ては戻っておらず、人手不足からくる航空便不足にもなりかねない状況だ。
せっかくのインバウンド需要を取り逃がさないためにも早急な対応が必要だ。
新卒企業就職人気ランキングでは、コロナ禍で100位圏外となっていた。
ANA、JALも2024年度ではANA49位、JAL77位と順位を上げてきており期待を持てる状況だ。

また、旅行者のパターンがコロナ禍を終えて変わってきている。
今まではビジネス利用は大きな顧客で、価格よりも日程や、時間を重視する形が多かった。
しかし、リモートワークが充実したことにより、週末の地方への予定を、木曜などから家族で航空機を利用、金曜はリモートワークをこなし、週末に地方での用事を済ませて週明け月曜などに戻るなど、ビジネスと旅行を混在させたようなパターンが出てきたのだ。

海外からの訪日客も、メジャーな観光地ではなく、地方都市などに流れる傾向も見受けられる。
これは訪日客が何度と来日したことにより、より『日本らしさ』を求めてのことのようだ。
地方都市の空港の場合、地場企業が請け負っている場合があり人材不足の解消は簡単にはいかないようだ。

今後の課題の一つに、SAFの利用が挙げられている。
経済産業省は2030年から航空機の燃料の1割にSAFを使うことを石油元売り会社に義務付けることにしている。これらの動きは二酸化炭素抑制というヨーロッパの動きに足並みを揃える形だ。
日本で現在考えられているのは、食用廃棄油の再利用を使ったものだが、価格の高さが専らの課題となっている。そのため、アメリカ産のSAFを利用することも検討の一つとなっているようだ。

手放した人材の確保、SAFの開発など大きな課題はあるものの、航空業界は今後も成長産業であり、需要が増えて行くのは明らかだ。
コロナ禍のことを思えば明るい先行きが見えてきたと言っていいのではないだろうか。

ポストコロナを見据えた世界

世間はパンデミックの脅威を乗り越えた。と言っては言い過ぎだが、世界的にみると過渡期は過ぎた様相だ。
世界の航空需要、国際線においてはパンデミック前の6割までは復調してきている。
前年比で最も伸びを示したのは欧州で425%となっている。ロシアのウクライナ侵攻があるがその影響はほとんど見られない。ウクライナ周辺国から国外へ避難する人々の動きもあるようだ。
そんな中、アジア太平洋の回復は2割弱と大幅に遅れをとっている。政府の規制が要因の一つである。
日本での国際線においては2022年10月11日以降から訪日客の上限が撤廃され回復が予想される。

国内線については、各国堅調に推移しており。日本においては2019年度比47%まで復調している。アメリカ、ブラジルも順調な回復ではあるが、中国のみオミクロン株流行による大規模ロックダウンや行動制限により、大きく減少したままだ。

一方、旅客輸送の穴を埋めるべく進めた国際貨物輸送は順調に増加している。コロナ禍で需要が高まった、電子半導体部品、自動車、医薬品などの国際輸送を担い、2019年の貨物量を上回る水準で2021年以降は推移しておりその役割を果たしている。
ANAなどは戦略的に増やすことで減少した旅客分を補う戦略をとっている。

JALはLCC戦略を本格的に始動させ、中距離国際線のLCC「ZIPAIR」でホノルル線を再開、シンガポール線を就航した。
JALは、3社(Jetstar、ZIPAIR、春秋航空)をグループLCCとしたことで、今後のLCC体制の構築を進めている。

航空業会誌によると、回復のキーワードは、定時運行便と、LCCだという。
制限ある時間での旅行者や、ビジネスでの利用には、定時運行というものは大変重要な事項である。
また、短距離での運行や、格安に重きを置くLCCにおいては、パンデミック化であっても業績を伸ばすことができたようだ。

世界空港の定時出発率ランキングの1位になったのは羽田空港だった。中規模空港、小規模空港でも、関西国際空港と、松山空港が1位となり、日本が占めた。日本の航空業会のこれからの復調が期待される。

コロナ禍で大打撃、航空業界の今後と代替燃料

 この度のCOVID-19の世界的流行によって航空業界は大きなダメージを受けた。航空需要が9割減という数字が重く語っている。世界的にも数多くの航空会社が破産に陥り、日本においてもLCCのエアアジアジャパンがその流れを受けた。
人々の移動が制限される中で伸びたのは貨物事業であった。世界的なコンテナ不足から、貨物の輸送比率は2019年の12%から20年には34%に増えたことは、航空業界で唯一の明るい材料となった。
ビジネスでの移動需要については、コロナ禍でテレワークが発達推奨されるに伴い激減している。そのため、旅客需要の回復は必須であり、ワクチンの普及によるこれからの人流の流れに期待したい。実際にここ2年ほどの停滞により、旅行者のフラストレーションはかなり溜まっていると思われ爆発的な移動につながる日もそう遠くない。旅客需要については価格に敏感に左右され、そのために大手業界が値下がりに踏み切ることも考えられる。その場合、LCCとの差別化が難しくなり更なる値下げ、格安だけでないサービスの提供が求められてくるのではないか。

日本においてはまだ大きな流れは見られないが、ヨーロッパ主導による脱炭素の波はおおきく、短距離航空路線が鉄道に切り替えられるという動きもある。日本にもその流れがおこらないとはいえず、実際ヨーロッパでは「飛び恥」(Flighi Shame)という言葉まで生まれ二酸化炭素の排出が多い飛行機に乗るのは恥ずかしいという考え方まで出てきている。
脱炭素の流れから石油を使用しない代替燃料SAFの使用を今後進めていく方針があり、2020年ノルウェーでは航空会社で使用する燃料のうち0.5%を代替燃料であるSAFを使用するよう義務付けることになった。2030年にはこの比率を30%にまで引き上げる方針で、今後代替燃料の使用にシフトしていくのが世界的な流れとなってきている。
このSAFとはトウモロコシなどの植物原料や、食品廃棄物、廃プラスチックなどさまざまな原料から開発されている。従来の化石燃料よりも80%程度二酸化炭素の排出を抑えることができるとされている。現在は特に欧州での開発が進んでいるが、生産できているSAFは世界需要に対しての0.03%にすぎず争奪戦になっているのだ。日本はこの規制に完全に乗り遅れており、代替燃料を輸入に頼らざる得ない状況がある。このままでは飛行機が飛ばせないという未来も現実味を帯びてくることを鑑み、日本最大手2社、ANAとJALは共同でレポートを発表、国産SAFの必要性を訴えている。このレポートによると2050年までには需要の全てをSAFで賄う必要があり、その頃には国産と輸入を半分ほどの割合にしていきたいという。巨額の投資も必要となるため、官民一体での取り組みが必要だと訴えている。
コロナ回復後は、世界的にも航空需要は増加していくことが予測されている。
代替燃料の国産化など多くの問題をどう乗り越えるのか、今後の流れに注視していきたい。

はじめに

かつての日本には、アジアの拠点空港として機能していた空港があった。それは、成田国際空港で、東アジアでは最も多くの航空会社が乗り入れ、周辺国に比べて就航都市も多かったからである。しかし、現在は毎年乗り入れている航空会社や就航都市が増えるアジアの空港が増加している。現在、成田空港からは74社、海外101都市と結ばれているが、韓国・ソウルの仁川空港からは86社、海外173都市、シンガポールのチャンギ空港からは101社、海外207都市と結ばれている。

また、日本の国際空港には多くの課題を抱えている。成田空港は夜間に全く発着できず、国内線も少なく、都心からも遠いうえに、発着枠が満杯で、新たな乗り入れ、増便ができない。一方で、発着枠に余裕がある関西国際空港や中部国際空港は、海上空港ゆえに維持費がかさむので、航空会社が乗り入れに際して生じる着陸料に転嫁されている。このため、関空は62社、海外66都市、中部は25社、海外27都市しか結ばれておらず、立派な施設を持て余している状態である。
アジア各国の空港が需要を伸ばしている中、かつての日本の空港の勢いを取り戻すために、2020年の東京五輪開催に向けて、世界中の人々を日本の空の玄関で歓迎する態勢を整えるために、日本の国際空港がアジアの拠点空港として機能する必要性が求められている。

そもそも空港では、航空機の離着陸、旅客や貨物の積み下ろしだけでなく、航空機の整備・補給能力、旅客や貨物の集配拠点といった役割が求められる。空港には、旅客や貨物の積み下ろしの設備であるターミナルビルや、航空機が離着陸するために必要な滑走路、ターミナルビルと滑走路の間に駐機場が並ぶエプロン、航空機がターミナルを離れて滑走路に向かうための道である誘導路、霧などの視界不良で航空機が着陸できないことを防ぐために、地上側から航空機を誘導するILS(計器着陸装置)、航空機を安全に離着陸できるように導く管制官が配置された管制塔がある。